一口に5年と言うには少しわびしい密着介護の月日が流れました。
そしてこれから先、どれだけという月日の際限はありません。
私が、天井走行器に興味を持ったのは、1年くらい前より主人の下半身がいよいよ動かなくなり、介助の力の負担に耐えられなくなってきた頃からです。
介護用品の店や展示会場を見て回り、どれがいいのか、行きつ戻りつ迷いつつ・・・試案を重ねたのは少々工事が大々的なことと金額も張る点もあったためでした。
本当はどなたか知り合いで、実際に使っている人に見せていただきたかったのですが、まだ設置の数が少ないのと天井走行器を使うような家庭は患者も介護人も心身ともに疲れ果てている場合が多く、その望みは果たせませんでした。
ある日、H病院のリハビリの先生が岡山の会合で新型の天井走行器の説明会があったと言われた一枚のパンフレットを頼りに、業者の言われるままに着工しました。
マンションという制約の中で高さに問題のある天井走行器は、初めから無理を承知でしたが、3日間で出来るという約束がいつの間にか半年の月日が経ってしまいました。
満足とも不満足とも半々の出来で、今後設置の方々の参考にしていただきたいと筆をとりました。
「百聞は一見にしかず」私もできれば先人の使い心地を聞いてから設置したかったと痛感しております。
今、介護用の新しい器具はいろいろと改良されながら出ております。実際に使ってみて役に立つものの選択は、経験者の話を聞くのが一番と思います。
天井走行器は一人きりの介護者の一人きりの時の、心の支えになることは間違いありません。
いかに新しい便利な器具が入っていても、在宅患者とその介護者にとって、信頼できるお医者様の医療の手が一番の強い味方であり、弱ったとき、困ったときの暖かい救いの手を切に祈ってやみません。
空中を 宇宙遊泳 浴びる風呂
みぎひだり テンヤワンヤの 初湯かな
夢もなく 力もなくて 共倒れ
|
|
|
|
|
|
| 1998年(平成10年1月) 『ここは地獄の一丁目』 |
中山真理の眉間の縦皺取りの記事が紙面をにぎわしている。
久方振り、しみじみと鏡を覗くと、眉間に深い二本の皺は、年齢と共に、
毎日の介護の苦労を表している。
薬局を閉めて六年半余り、それは脳梗塞の主人と一対一で向かい合う 日々の歴史でもある。
主人の実家は雪深い中国山地の谷間の集落で、よく寒い時期、
便所で倒れる人の話を聞いた事がある。
|
何時もの様に4日ぶりの大便を、何時もの様に車椅子で便所に連れて行って座らせて居る時、
なかなか大便が出ず、かなり長時間きばって居ましたら、ウ、ウ、ウ、・・・といったと思ったら、
両手をいびつに上に挙げ、体を便座の上で左右(後ろは出来ず)に、 ぎくぎく ぐるぐる回し、
顔色は蒼白、瞳は開いているが、一点を見詰めて動いていない。
これは何時もと違うぞと思い、主人の体に抱きついたが、なかなか止まらない。
どうにか車椅子に乗せ、やっとの思いでベットに連れて帰ったのだが、
またそこで後のめりに成り、手を上げ、体を反らして倒れてしまって,
体がベットの上に半分も掛かっていないので、ずり落ちそうで、
胸から下をベットの上に引き上げるのに、火事場の馬鹿力と、満身の力を込めて
引っ張り上げました。(天井吊りを考える余裕なし) その間 タッタ1〜2分でしょうか。
脈は飛びながら弱 速 手足は冷え切て反応も返事も無い。
カイロを方々に入れて暖めながら、力まない様にと言いながら、腹部をのの字に撫でる。
息をしているのかと案じつつも、それ以上何も出来ず、安静にさすのみ。 |
1時間程経って看護婦さんに連絡する。湯で口をしめして少しずつ口に入れる。
気が付けば少しずつ水分を摂取さす様に言われ、1時間後ぐらいに又連絡する様に
言われ只見守るのみ。
便所の中で寒い時 力んで力を使い果たし、急に血圧が下がり、痙攣状態を起こし、
倒れたまま冷えて亡くなる人は、この様な状態かと、断末魔のあがきをまの辺りに
してしまった私。半坪の密室で繰り広げられる地獄絵巻。
後で本人に尋ねると、何も覚えてないとの事。あれまま放置して置けば、
この世もあの世もあまり遠くは無い。本当に恐ろしい事・・・・
それにしてもタッタ十秒ほどの舞に、はからずも地獄の一丁目を見た。
追伸 明くる朝、夜も開けきらない五時 お腹をにがらせて、暫くあずった後、
あまり硬くない便を両手の手のひらを小さくした程 出したが一日よう起き無かった。
その明くる日、これまた四時過ぎから腹痛を訴え、8センチの長い浣腸の届かない
腸の奥の方から、直径四〜五センチ長さ二十センチもある?宿便を前後下痢便に
守られ、開通した。
ほっとして、ヘルパーさんにシャワーを浴びさせて貰い くたくたの眠りに着いて、一件落着。 |
追追伸 それから少し忘れかけた二週間程の後 介護者に大変な事が起こった。
風邪気味で始まった症状は歯痛と成り、腰痛となって それこそ地獄の一丁目を
右往左往とさまよい歩いた。
|
| (今振り返れば、それは主人が亡くなる たった十ヵ月前の出来事でした。) |
|
|
|
|